今回のマケリスは、BtoBデジタルマーケティングがなぜ必要なのか?を開設していきます。
なぜ、BtoBデジタルマーケティングが重要になってきているのか?
これまでのBtoB企業ではマーケティング活動よりも営業活動が重要視されてきたのです。
多くの企業で、営業パーソンがテレアポや飛び込みの「営業」を行い、見込み客のところへカタログを持って、足しげく通うことで案件を拡大していきました。
しかしこの10年ほどでインターネットが生活の中にまで入り込んで普及したことで、ほぼすべてのビジネスパースンがスマホを一人一台持ち運ぶようになりました。
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで情報を探し、FacebookやX(旧Twitter)、Instagramで情報を得ることも当たり前になりました。
さらにはAmazonなどのECサイトで日用品を買ったり、メルカリで不要なものを売り買いしたり、個人の消費行動や購買行動は、インターネットを介して行うことが当たり前になってきています。こうした消費者の変化は、BtoBの分野でも起きており、見込み客の情報の取得先が、企業の営業パーソンからWebサイトと移り変わっています。
BtoB情報源調査から読み解く顧客の行動変化
次の図はトライベック・ブランド戦略研究所が行ったBtoBサイトの調査結果から引用したものですが、
仕事上の製品・サービスの情報源、つまりBtoB市場における情報源として、「企業のWebサイト」が1位に来ています。
3位のカタログ・パンフレットもWebカタログなどが含まれますし、Webサイトを経由して「資料請求」「資料ダウンロード」などの操作をしているケースを考えると、BtoBの商取引においても、Webサイトなどのオンラインチャネルの重要性が増していることがうかがえます。
こうした見込み客の情報行動の変化を、端的に表したのが次の図です。
これは2012年に、米国のコーポレート・エグゼクティブ・ボードが発表したThe DigitalEvolution In B2B Marketingという調査資料の内容を筆者が図示したものですが、この資料では「BtoBでは顧客の購買プロセスの57%が、営業担当者に会う前にすでに終わっている」という事実が明らかにされています。
この調査結果については、ハーバーアド・ビジネス・レビュー誌の2012年12月号で「ソリューション営業は終わった(The End of Solution Sales)」という衝撃的なタイトルの論文で日本に紹介され、BtoBの営業・マーケティング業界に激震を走らせました。
調査の結果が示したのは、現代のBtoB市場の顧客は、インターネットを活用して自ら情報収集を行い、自社が抱える課題の抱える課題を自分で見つけ、さらにベンダー選定を行っている、ということ。
顧客が自ら行うベンダー選定の段階で選べれなければ営業パーソンは声をかけてすらもらえないということです。
従来は、顧客の情報源は展示会や業界紙、定期的に自社を訪れてくれる営業パーソンしかありませんでした。そのため、自社が抱えている課題の解決策を探すときには、まずは懇意の営業パーソンに声をかけ、相談する、というのが一般的な行動パターンでした。しかしいまでは、Web上の情報を参考にしつつ、顧客自らがそれらの検討と意思決定を行うようになったのです。課題解決の方法はいまや営業パーソンではなく、顧客自らが決めています。
企業のマーケティング体制も顧客の変化に合わせ新しい時代の営業・マーケティング活動へと移行していかなければならない、ということになります。
顧客とのタッチポイントは増え続けている
こうした業界の動きは、 BtoB企業の営業活動に従事する人たちにとっては、 もしかすると「自身の仕事が減ってしまう」という点で恐ろしいニュースに聞こえるかもしれません。
しかしBtoBマーケティングを手がけているマーケターにとっては、「顧客とのタッチポイントが以前より増えている」という観点から、むしろ喜ばしい動きと言えます。
たとえば2000年前後であれば、前述のように郵送やFAXのDM、 展示会、 業界紙への広告出稿、テレアポ、飛び込み営業などでしか、 顧客との接点を持つことはできませんでした。予算が潤沢なときには、マス広告も選択肢に入ってくる、という程度でした。
時代が進んで、私がマーケティング業界に入った2010年くらいの段階になると、 オンライン系の有力なチャネルがいくつか出てきていました。 とはいえ、当時はBtoB企業のマーケティング手法と言えば、 検索広告 (GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果画面に、ユーザーが使用したキーワードに連動して掲載される広告。 「リスティング広告」 とも呼ばれる)とSEO(検索エンジン最適化) くらいしかありませんでした。
それが現在では、 FacebookやTwitter LINEのタイムライン上でコンテンツとコンテンツの間に掲載されるインフィード広告、 さまざまなウェブサイトや動画、アプリに表示されるディスプレイ広告なども選択肢として選べるようになり、昨今ではテレビCMやタクシー広告などでもBtoB企業の出稿が増えています。
BtoBマーケターにとっては、顧客とのコミュニケーションを取れるチャネルが劇的に増えているのです。
しかも、デジタルなチャネルや手法を活用したマーケティングでは、見込み客の行動がデータとして蓄積されるようになっているので、 データに基づいて、顧客とのより的確なコミュニケーションが取れる時代になっています。
こうしたビジネス環境の変化を、 複雑性が増し、仕事が増えただけだと捉える人もいるかもしれません。
しかし、 「マーケターが会社の売上・利益に貢献しやすくなっている」 「マーケターの腕いかんで、顧客とのコミュニケーションの質を大きく変えられるチャンスが増えている」と捉えることもできます。
インターネットの登場以降、 顧客の情報行動や購買行動は劇的に変化しました。 この流れは不可逆的ですから、 今後もますます BtoB企業において「デジタル」や「マーケティング」が果たす役割は増えていくでしょう。
ここまで、BtoBデジタルマーケティングがなぜ必要なのか?について解説してきました。
次回は、テレワーク時代のBtoBデジタルマーケティングの加速と課題・対策について説明していきます。